2016年9月8日木曜日

臨床検査技師国家試験対策 統計(年齢別)、血液検査、n-3系脂肪酸、染色法


東京メディカルスクール 代表の岡田です。
当スクールには臨床検査技師、看護師、理学療法士、柔道整復師
をはじめ、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師など多数の
プロフェッショナル講師が在籍しています。

臨床検査技師国家試験は幅広い試験内容となっており、
難関化が進み、低学年でも解剖学、生理学、生化学などの
進級が難しくなっているという声を聞きます。

当スクールでは現役生のうちからの定期試験や臨床検査技師
国家試験対策をマンツーマン個別指導で行っております。

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では臨床検査の講師の先生にバトンタッチです。
よろしくお願いいたします!

はい!第3回目は、やや知識を必要とする問題を出題しました。
低学年の皆さんは、すべて解答できなくても構いません。
高学年の皆さんは、このような問題にも対応できるようにしましょう!
問題は全部で4問あります。さっそく始めましょう!

それでは1問目です。

【問題1】2005年以降の年齢階級別死亡率において、
20歳~29歳の死因の第1位はどれか。(公衆衛生学)
(1)悪性新生物
(2)心疾患
(3)脳血管疾患
(4)自殺
(5)不慮の事故

解答:4
解説:公衆衛生学から、人口統計に関する問題です。
今回の設問は、「年齢階級別死亡率」についての問題です。

最新の統計情報である「平成26年人口動態統計月報年計
(概数)の概況(厚生労働省)」の12ページ、年齢別死因、図7-1
性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合では、
20歳~29歳の男女ともに自殺による割合が一番高くなっています。
 
公衆衛生学では「疫学」・「人口統計」・「保険医療」・「環境」など
のカテゴリーから問題が出題されています。

人口統計に関する問題も幾度となく出題されています。
また、得点に結びつけやすい科目です。
厚生の指標(厚生労働統計協会:出版)や厚生労働省の
ホームページ等でなるべく新しい情報を入手しておくことも必要です。
では、2問目に行きましょう。

【問題2】検査項目と測定方法の組み合わせで誤っているのはどれか。

2つ選べ。(臨床化学/血液検査学)
(1)赤血球沈降速度     Westergren法
(2)総蛋白         ビウレット法
(3)血糖          GOD-POD法
(4)カルシウム       Fiske-SubbaRow法
(5)マグネシウム      OCPC法

解答:4、5
解説:臨床化学・血液検査学から測定法の問題です。
測定方法や原理の問題は定期試験、国家試験でもよく出題されます。


◯(1)赤血球沈降速度:国際標準法であるWestergren法の1時間法が測定法として用いられている。自動測定器でも測定法は同様である。

◯(2)総蛋白:血清総タンパク濃度の測定には、Kjeldahl法により窒素量を測定して算出する方法、屈折計法、ビウレット法、比重から算出する方法がある。
ビウレット法は操作が簡便で、タンパクの種類による差が少なく、日常検査に適した方法であり、
自動分析機では広く測定法として用いられている。

◯(3)血糖:測定法として、還元法(Somogyi-Nelson法,Hoffman法)、縮合法(o-トルイジン法)、
酵素法(GOD-POD法,HK-G-6-PD法)がある。 
現在よく用いられる方法は酵素法のGOD-POD法、
HK-G-6-PG法やヘキソキナーゼを用いた変法である。
×(4)カルシウム:生体試料中のCaの測定法には、
シュウ酸塩沈殿-KMnO4滴定法、キレート滴定法、比色法、
原子吸光法、電極法などがある。このうち、比色法(OCPC法)、
原子吸光分析法はCaに特異性が高く広く使用されている。
なお、電極法は生理的に重要なCa2+の直接測定法(イオン化Ca測定)として重要である。

問題文中のFiske-SubbaRow法は、無機リンの古典的測定法である。

×(5)マグネシウム:キレート滴定法であるキシリジルブルー法、酵素法が用いられる。
          マグネシウムの酵素法では、抗凝固剤としてEDTA-2Naは使用してはいけない。

病院や検査センターでは、自動分析機で測定していますが、
測定原理や方法の基本的な部分は変わりません。
やはり、得点を得やすい問題ですので、見逃さないでおくことが必要です。
次の問題にいきましょう。

【問題3】n-3系脂肪酸はどれか。(生化学)

(1)リノール酸
(2)アラキドン酸
(3)α-リノレン酸
(4)γ-リノレン酸
(5)オレイン酸

解答:3
解説:生化学から脂肪酸に関する問題です。
脂肪酸は、その科学的構造から二重結合の数により大きく次の三つに分類されます。

1)二重結合を持たない飽和脂肪酸
2)二重結合がひとつの一価不飽和脂肪酸
3)二重結合を二つ以上含む多価不飽和脂肪酸

さらに、多価不飽和脂肪酸は二重結合の
位置によりn-6系(ω-6系)、n-3系(ω-3系)があります。
本問題はn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の分類を問う問題です。
(詳細な化学式は成書を参照すること。)

×(1)リノール酸:必須脂肪酸。炭素数18、2つのcis二重結合を持つ
多価不飽和脂肪酸である。n-6系(ω-6系)脂肪酸に分類される。
×(2)アラキドン酸:必須脂肪酸。4つの二重結合を含む20個の
炭素鎖からなる多価不飽和脂肪酸である。n-6系(ω-6系)脂肪酸に分類される。
◯(3)α-リノレン酸:α-リノレン酸は直鎖18炭素で3つのcis二重結合を持つカルボン酸である。
最初の二重結合はω末端から数えて3番目の炭素に位置する。したがって、
α-リノレン酸は多価不飽和脂肪酸であり、n-3系(ω-3系)脂肪酸である。
×(4)γ-リノレン酸:α-リノレン酸の二重結合が異なる異性体である。n-6系(ω-6系)脂肪酸である。
×(5)オレイン酸:一価の不飽和脂肪酸。cis型のシスモノエン脂肪酸であり、n-9系脂肪酸である。

 生体物質の脂肪酸に関する問題ですが、
やや知識を必要とする問題です。定期試験ではここまで理解しておくことが求め
られるでしょう。国家試験でも、過去に飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の
分類を問う問題が出題されたことがあります。
今後国家試験でも、n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸の分類まで出題される可能性はあります。
ここまでは、いかがでしたか。次が最後の問題です。


【問題4】臨床から髄液検体および血液検体が提出された。
電子カルテシステムにより、患者情報を確認したところ、
主訴および診察時の身体所見は次のとおりであった。
 39歳男性。同性愛者。主訴:頭痛。2週間前から微熱と倦怠感とを自覚していた。
2日前から頭重感を伴うようになっ
た。昨日から持続的な頭痛が加わり、
次第に増悪してきたため受診。これまでの経過で嘔吐したことはない。

<身体所見>
意識レベルはJCS I-1。体温37.6℃。脈拍92/分、整。血圧162/70mmHg。呼吸数21/分。
SpO2 96%(room air)。口腔内に白苔を認める。Kernig兆候は陽性。
続いて、髄液検査および血液検査を実施したところ、次の結果が得られた。

<脳脊髄液所見>
外観は水様、初圧200mmHg(基準:70~170)、
細胞数42/mm3(すべて単核球:基準 0~2)、
蛋白 55mg/dL(基準:15~45)、糖 40mg/dL(基準:50~75)。

<血液所見>
赤血球 400万、Hb 13.2g/dL、Ht 41%、白血球6,200、血小板11万。

<免疫学所見>
CRP 8.2mg/dL、
HIV抗体陽性。
髄液を染色したところ、Cryptococcus neoformansと推定される染色像であった。

実施した染色法として考えられるのはどれか。
(1)ギムザ染色
(2)抗酸菌染色
(3)グラム染色
(4)パーカーインク法
(5)墨汁染色


解答:5
解説:微生物学に関する症例問題です。近年の国家試験では
症例を提示し検査法や考えられる疾患・原因を推察する問題が
増加しています。国家試験では解答に困るほど難易度
の高い問題を出題されることは少ないです。


<解答へのアプローチ>

1)今回臨床から提出された検体に、髄液が含まれているという点にまず
注目するところです。髄液検査が依頼される場合、
診察時に中枢神経系疾患の病態を考えていると推察できます。

2)身体所見では、体温・脈拍・血圧ともに若干高く、
呼吸数は通常より低いことがわかります。意識レベルは鮮明です。
患者の主訴は頭痛であり、微熱と倦怠感を自覚していますので、
主訴と身体所見の不一致はありません。
しかし、口腔内に白苔を認め、Kernig兆候が陽性であることを見逃してはいけません。
Kernig兆候とは、神経学的所見のひとつで、髄膜刺激症状の一つです。

また、白苔は扁桃腺炎の時によく見られる所見です。
3)これらのことから、まず細菌性・ウイルス性の感染症を疑うことができます。
4)次に臨床検査結果を読み解きましょう。
まず、脳脊髄液では、糖の低値、細胞数で単核球の増加が
著しいことがこの検査結果からわかります。
髄液中の糖が低値となる場合、細菌性・結核性・真菌性髄膜炎を候補
として挙げることができます。
また、単核球の増加では、結核性・真菌性髄膜炎・ウイルス感染症が候補となります。
次に、血液・免疫所見です。赤血球数やヘモグロビン濃度では貧血の所見は見られません。
血小板数がやや低値を示しているところは気になるところですが、
CRPが高くHIV抗体が陽性であることの方が、臨床的意義は高いでしょう。

HIV抗体陽性という点は見逃せません。
この段階で、患者はHIV感染症であると考えられます。
しかしながら、AIDSを発症しているか否かまではわかりません。
C反応性タンパクであるCRPが上昇していることから、
感染症による炎症反応が起こっていることを疑わせます。


5)問題文中に「髄液の染色により、Cryptococcus neoformansと推定される染色像」とあります。
選択肢は(1)~(5)までありますが、
Cryptococcus neoformansの鑑別に有用な染色方法としては、
(5)墨汁染色
です


(補足)
・ギムザ染色:血液像の染色で使われる染色法であるが、
マラリアやトリパノゾーマにも有用である。
・抗酸菌染色:代表的なものとして結核菌があるが、放線菌類を疑う場合にも有用である。
・グラム染色:一般的な細菌・真菌を染色するのに用いられる。
・パーカーインク法:皮膚科材料を直接塗抹標本で鏡検するために
用いられる染色法である。
真菌を染め上げるのに有用である。

症例問題の解答は、一つの分野の知識だけでは対応できません。
全分野にわたる複合的な知識が求められます。
こうした問題は諦めがちですが、題文中に回答のヒントとなるものがあります。
それを見つけ、解答に結びつけましょう。

今回は難易度がやや高い問題、基礎的知識
をやや発展させた問題を出題しました。

いずれの問題も、定期試験や国家試験でも
問われる可能性が高いところです。

今年度国家試験を受験する予定の方は、
自分の得意な科目と不得意な科目を把握し、
今のうちに不得意な科目を克服しておきましょう。

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