2016年11月10日木曜日

臨床検査技師予備校 脂肪酸、HCV、医動物学、アニオンギャップ


東京メディカルスクール 代表の岡田です。

今回は当スクールの
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定期試験・臨床検査技師国家試験対策無料メールマガジン、
第6回目です。
第6回目は、生化学・免疫検査学・公衆衛生学・
医動物学・臨床化学/化学分析検査学から問題を出題しました。

低学年の皆さんもできるだけ多くの問題を解答できるようにしましょう。
高学年の皆さんは、全問正解を目指して頑張りましょう!

問題は前回と同様に全部で5問あります。さっそく始めましょう!
それでは、1問目です。

【問題1】脂肪酸合成過程の最終産物はどれか。(生化学)


(1)メバロン酸
(2)遊離パルミチン酸
(3)オキサロ酢酸
(4)フマル酸
(5)アスパラギン酸


解答:2
解説:生化学から、脂質代謝の問題です。
直近の国家試験では「脂肪酸のβ酸化」に関する問題が出題されました。

生化学の基礎的な部分の問題ですので、逃すことのないようにししておきましょう。
脂肪酸の合成は、アセチル-CoAのカルボキシル化によるマロニル-CoAの生成である。
アセチル-CoAカルボキシラーゼによる
マロニル-CoAの形成後、合成経路の次の段階は、
アシル担体(運搬)タンパク(ACP)のホスホパンテテイン基への付着に
よる基質の活性化である。パルミチン酸合成の全体反応は次のとおりである。

 8アセチルCoA+14NADPH+7ATP→
 パルミチン酸+8CoA+6H2O+14NADP+
 +7ADP+Pi


また、パルミチン酸になるとチオラーゼの作用により、遊離する。
代謝経路の詳細については、成書を参考とすること。

代謝に関する問題は比較的出題されやすい分野です。
どの臓器で起こるのか?細胞質orミトコンドリアなのかという点も
律速酵素や最終産物とともに押さえておくと、様々な問題に対応できるでしょう。
では、2問目に行きましょう。




【問題2】C型肝炎ウイルス(HCV)が体内に
確実に存在しないことを確認できる検査法はどれか。(免疫検査学)


(1)HCV抗体検査
(2)HCV核酸増幅定量検査
(3)HCV核酸増幅定性検査
(4)HCVコア抗原検査


解答:2、3
解説:免疫検査学から、C型肝炎ウイルスの
検査法についての問題です。
国家試験ではHIV検査に関しては過去に出題されていますが、
C型肝炎ウイルスの検査法は出題があまりされていません。
模擬試験では、出題される内容の問題です。

×(1)HCV抗体検査:HCV抗体定性・定量検査は,
かつては血清肝炎と称され,
輸血など血液を介して感染するC型肝炎ウイルスに
よるC型肝炎の診断のためにその抗体の有無からスクリーニングするものである。
本検査が陰性であれば、
現在または過去のウイルス感染を否定することができる。
しかし、ウインドウ・ピリオドにより感染直後の
検査では陰性となることに注意が必要である。
設問は、「体内に確実に存在しないことを
確認できる検査法はどれか。」であり、本検査が陰性の場合でも
「確実に存在しない」とはいえないことから、誤りである。

×(2)HCV核酸増幅定量検査:本検査は次の場合に行われる。
1.C型肝炎ウイルス(HCV-RNA)量を知りたいとき。
2.IFN投与患者の経過観察および投与後の効果予測と効果判定。
3.C型慢性肝炎の抗ウイルス療法開始前。
4.C型肝炎の自然経過での病勢の推移を知りたいとき。
5.肝移植後C型肝炎の再発後の経過観察をするとき。
・測定感度(1,000コピー/mL)未満の低ウイルス量の場合、
偽陰性となりHCV感染を否定できないことがある。

○(3)HCV核酸増幅定性検査:本検査は次の場合に行われる。
1.C型肝炎ウイルス存在の確認。
2.HCV抗体陽性者におけるウイルス持続感染の確認検査。
3.HCV抗体陰性者で急性C型肝炎を疑うとき。
4.IFN投与患者の経過観察および投与後の効果予測と効果判定。
5.HCV抗体が低力価のとき。
6.抗ウイルス療法中あるいは治療後のC型肝炎ウイルスの消失の有無を確認するとき。
7.C型急性肝炎が疑われるがHCV抗体が陰性のとき。
8.検体量が0.5ml以下で限られ,確実にC型肝炎ウイルス感染を判断したいとき。
・現在市販のHCV-RNA検出法の中では最も感度がよい方法である。
したがって、HCVに感染しているかいないかをみるには最適である。

×(4)HCVコア抗原検査:HCVコア抗原量を測
定することによりC型肝炎の病状の推移の予測、
HCV抗体陽性者の血中HCVの存在、C型肝炎の
経過中のウイルス量の変化やインターフェロン治療効果の予測ができる。

C型肝炎ウイルス(HCV)の検査法は、
メーカーによっても測定感度が異なる場合があります。
また、検査技術や診断基準は年々新しくなっていますので、
新しい情報を知識として取り込んでおくことも必要です。
次の問題に行きましょう。

【問題3】直接塗抹法による糞便検査が適しているのはどれか。(医動物学)


(1)蟯虫
(2)肝吸虫
(3)鉤虫
(4)回虫
(5)東洋毛様線虫


解答:4
解説:医動物学から寄生虫の検査方法に関する問題です。
虫卵の特徴や検査方法は模擬試験、定期試験でもよく出題されるところです。


糞便中の寄生虫検査は…
・直接塗抹法(薄切塗抹法、セロファン厚層塗抹法)
・集卵法(沈殿法、浮遊法)
・特定虫卵の検査(セロファンテープ検肛法、
肺吸虫卵・肝蛭卵検出法、肺吸虫卵検出法、日本住血吸虫卵検出法)
・虫卵孵化培養法(ろ紙培養法)がある。
(それぞれの検査方法の詳細は成書で確認すること。)
直接塗抹法では、鉤虫・東洋毛様線虫などの産卵数の少ない
寄生虫卵の検出には適さない。
本法は回虫、糞線虫のラブジチス型幼虫が見出される。


×(1)蟯虫卵の検査にはセロファンテープ検肛法が適している。
×(2)肺吸虫は喀痰中と喀痰を嚥下するために糞便中に現れる。糞便中の虫卵検査には遠心沈殿集卵法を用いる。
一方、喀痰内の虫卵検査には喀痰を直接鏡検するか、あるいは喀痰を集め1%水酸化ナトリウム液または10%アンチホルミン液を加えて攪拌溶解し、沈渣を鏡検する。
×(3)産卵数の少ない鉤虫の虫卵検査には、25~30℃の孵卵器内で10~14日保ち仔虫まで発育させる虫卵孵化培養法が適している。
○(4)正しい。
×(5)東洋毛様線虫も鉤虫と同様に卵の産卵数が少ないため、
25~30℃の孵卵器内で10~14日保ち仔虫まで発育させる虫卵孵化培養法が適している。

検査方法は大きく分けて上記の4つです。
検査法別に対象の寄生虫をまとめておくと良いでしょう。
あと2問です。頑張りましょう。

【問題4】食中毒の「要因」と「主な原因」の
組み合わせとして誤っているのはどれか。(公衆衛生学)


(1)鶏肉の生食        カンピロバクター
(2)スルメイカの刺身     ヒスタミン産生菌
(3)ヒラメの刺身       グドア・セプテンプンクタータ
(4)馬刺し          ザルコシスティス・フェアリ
(5)二枚貝の生食       ノロウイルス


解答:2


解説:公衆衛生学から、食中毒の要因と原因に関する問題です。
食中毒の原因菌や原因となる物質を問
問題は模擬試験や定期試験でもよく出題されます。
今回は原因だけではなく、その要因との関係性を問う問題を出題しています。


○(1)正しい。いわゆる「鳥刺し」や十分加
熱されていない鶏肉を喫食したことによる食中毒の多くは
カンピロバクターが原因である。
×(2)誤り。生のイカを食することによる食中毒の原因としてはアニサキスが多い。
ヒスタミンによる食中毒はヒスチジンを多く含む、カジキ、マグロ、カツオ、サバ、サンマ、イワシ、アジなどの赤身魚
及びその加工品等がその原因となることが多い。代表的なヒスタミン産生菌として、Morganella morganii およびKlebsiella oxytocaがある。
○(3)正しい。ここ数年間、食後数時間で一過性のおう吐や下痢を発症し、軽症で終わる原因不明の食中毒が
全国的に発生していた。こうした事例の多くでは、共通して、鮮魚介類、特にヒラメの刺身が提供されており、
厚生労働省などが調査をしたところ、ヒラメに寄生したクドア・セプテンプンクタータ (Kudoa septempunctata)
がヒトに下痢症状等を引き起こすことが判明した。
○(4)正しい。ザルコシスティス・フェアリに汚染された馬肉を喫食することにより起こる食中毒である。
ザルコシスティス・フェアリは犬と馬の寄生虫であり、犬がこの寄生虫に感染すると糞便の中に寄生虫を排出する。
馬はこの糞便に汚染された飼料や飲用水などを食べることによって感染する。
馬の体の中では筋肉に寄生するため、この寄生虫に感染した馬の肉を食べた犬に感染する。
このように、犬と馬との間で生き続けているが、人に寄生して体内で発育することはない。 
○(5)正しい。ノロウイルスによる食中毒の多くは生食または加熱が十分でない二枚貝の喫食である。
牡蠣、アサリ、ハマグリ、シジミなどの二枚貝はプランクトンと同時にウイルスをこし取り中腸腺にウイルスを蓄える。
したがって、アサリ、シジミなども中腸腺にウイルスを蓄えている。
しかし、これらを生食することはまずない。ただ、ホタテは貝柱だけを刺身で食べることもあるが、
殻付きの貝を焼いて食べることもある。このとき、十分加熱されない場合、ノロウイルスに感染する可能性がある。

ザルコシスティス・フェアリやクドア・
セプテンプンクタータは2010年頃に食中毒の原因として注目された寄生虫です。
この機会に知識として入れておきましょう。
次が最後の問題です。

【問題5】アニオンギャップを計算する際に

必要なのはどれか。2つ選べ。(臨床化学/化学分析検査学)


(1)カルリウムイオン
(2)水素イオン
(3)重炭酸イオン
(4)ナトリウムイオン
(5)リン酸イオン


解答:3、4



解説:臨床化学/化学分析検査学から、
酸・塩基平衡に関する問題です。生理学でも問われることがあります。
模擬試験や国家試験でも出題頻度が高い分野ですので、アニオンギャップに限らず、酸・塩基平衡については十分理解して
おきましょう。

<アニオンギャップ>

細胞外液中の陽イオンと陰イオンは等量存在し、陽イオンとしてNa+と測定されない陽イオン
(unmeasured cations; UC)、陰イオンとしてClイオン、HCO3イオンと測定されない陰イオン(unmeasured anions; UA)からなる。血液中の陽イオン(カチオン)の総量と、陰イオン(アニオン)の差をアニオンギャップという(AG=UA-UC)。
臨床的に、アニオンギャップ(AG)は【AG=Na+-(Clイオン+HCO3イオン)】の式で求められる。
AGは代謝性アシドーシスの原因を鑑別する指標となる。AGの増加は、血中に不揮発性酸(固定酸)が増加した
代謝性アシドーシスの際に認められ、糖尿病性ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、
腎不全およびサリチル酸(アスピリン)中毒などがその代表である。
AGが正常の代謝性アシドーシスは,重炭酸塩基(HCO3イオン)が体外に異常に失われた場合にみられ、尿細管性アシドーシスや
下痢などがその代表である。この場合、HCO3イオンの喪失に対しClイオンが代償性に同量増加するためAGは正常値を示す。
(例)血液ガス分析でpH=7.31、Na=135、Cl=90、HCO3=24、pCO2=39である場合。AG=135-(90+24)=21。
アニオンギャップの基準値は12±2 mEq/mLであることから、アニオンギャップの上昇と代謝性アシドーシスが
あることがわかる。

何かと酸・塩基平衡の問題は避けがちになりますが、そこを取り組むかどうかが分かれ目となる場合があります。

いかがでしたか。
今回で6回目になりましたが、これまでの問題の正解率はいかがだったでしょうか。
国家試験の問題は概ね各科目とも同じレベルになるように若干の調整がされています。一科目のみ突出して難易度の高い問題が出ることは少ないでしょう。
この時期、朝晩の気温差が段々と開いてきました。体調管理には気をつけましょう。


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