2016年12月20日火曜日

臨床検査の学生さん向け学習 


東京メディカルスクール 代表の岡田です。
当スクールでは臨床検査の学生様、国家試験対策のマンツーマン個別指導
を行っております。今回は配信しているメールマガジンです!

先生よろしくお願いします!


定期試験・臨床検査技師国家試験対策無料メールマガジン、第8回目です。
第8回目は、国家試験や模擬試験にもよく出る問題を基に、
基礎的な問題を出題しました。
低学年の皆さんにも、回答できる問題だと思います。
高学年の皆さんは、全問正解できるように頑張りましょう!
問題は全部で5問あります。さっそく始めましょう!
それでは、1問目です

【問題1】生体防御機構に関与する細胞とその機能の組合せで正しいのはどれか。(免疫学)
(1)好中球           抗体の産生
(2)肥満細胞          脂質メディエーターの産生
(3)ヘルパーT細胞       貪食
(4)形質細胞          補体の活性化
(5)ランゲルハンス細胞     抗原の提示

解答:2、5

解説:免疫学から防御機構に関与する細胞の働きに関する基本的な問題です。
低学年のうちから、確実に理解しましょう。高学年のみなさん、この問題は落とせません。
×(1)誤り。好中球は血液中の白血球数の約45~74%を占め、その役割は食作用(貪食)である。
○(2)正しい。肥満細胞(Mast cell)は、鼻粘膜や皮膚など外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在する、
造血幹細胞由来の細胞である。Mast cellの大きな特徴は、中身の詰まった顆粒を多数有することである。
この顆粒の中には、強力な炎症性メディエーターであるヒスタミンや多数のプロテアーゼ、ヘパリンをはじめとする硫酸化プロテオグリカンが豊富に含まれている。脱顆粒によりこれらを遊離するほか、IgEに対する高親和性受容体FcεRIを発現しており、IgEを介して多様な抗原を認識することができる。
また、サイトカイン(TNF-α、IL-4,-13、IL-6、IL-3、chemokines)や脂質メディエーター
(血小板活性化因子、プロスタグランジンD2,E2、ロイコトリエンB4,C4)を産生する。
×(3)謝り。CD4を発現したT細胞は他のT細胞の機能発現を誘導したりB細胞の分化成熟、抗体産生を誘導したりする
ヘルパーT細胞として機能する。
このCD4陽性T細胞は、後天性免疫不全症候群 (AIDS) の病原ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス (HIV) や、成人T細胞白血病 (ATL) の
病原ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) が感染する細胞である。
×(4)謝り。形質細胞はB細胞が分化した細胞であり、分泌型の免疫グロブリンの合成と分泌に特化し、液性免疫に関与する。
骨髄を離れたB細胞は一般的にリンパ節で最終分化し、抗原提示細胞として抗原を取り込む。
○(5)正しい。ランゲルハンス細胞は、表皮に存在する樹状細胞の一つである。遊走性で、細胞内の抗原輸送を担うバーベック顆粒(Birbeck granule)があり、抗原を樹枝状の突起で取り込むとリンパ管を通って特定のリンパ節に移動し、抗原をT細胞に提示しこれを感作する。感作されたT細胞が皮膚に移行して抗原に出会うとサイトカインを放出し、異物を殺傷したり、炎症などを引き起こす。

 免疫機構に関与する細胞の役割は、落とせないところです。確実に理解しておきましょう。

次の問題に行きましょう!


【問題2】貧血性梗塞を生じるのはどれか。(病理学)


(1)小腸
(2)肺
(3)卵巣
(4)肝臓
(5)脾臓


解答:5

解説:病理学から梗塞の種類を問う問題です。過去の国家試験、模擬試験では頻出されています。
しっかりと押さえておくようにしましょう。

【梗塞の種類】
・貧血性梗塞(白色梗塞):主に脳梗塞、心筋梗塞、脾臓、腎臓などで見られる。脳梗塞では壊死で陥った脳組織は融解壊死する。
・出血性梗塞(赤色梗塞):静脈閉塞にのみ生じる場合、静脈閉塞や動脈閉塞が続発した場合、動脈閉塞に静脈閉塞が加わる場合に生じる。主に血管の二重支配を受ける臓器で起こりやすい。例として肺(肺動脈、気管支動脈)、肝(肝動脈、門脈)、小腸や大腸などの腸管(多くの腸管膜動脈枝が吻合する)、生殖器(睾丸、卵巣)に見られる。形状は楔形ではなく、地図状に見える。出血で暗赤色。小腸は絞扼性腸閉塞、卵巣は卵巣嚢胞の捻転、静脈性血栓症では脾臓や腎臓、脳に出血性梗塞になることがある。


次の問題です。
【問題3】マラリア患者の血液検体を染色したい。
染色方法として適切なのはどれか。(医動物学/血液検査学)


(1)グラム染色
(2)ギムザ染色
(3)H-E染色
(4)グロコット染色
(5)ヒメネス染色

解答:2
解説:医動物学からマラリア原虫の検査法に関する問題です。今回のように検査法を直接問う問題は少ないですが、
確実に解答できるようにしておきましょう。
マラリアは、単細胞生物であるマラリア原虫(Plasmodium spp.)によって引き起こされ、ハマダラカ(Anopheles spp.)によって媒介されます。
ヒトの病原体となるものはながらく熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)の4種類であったが、サルマラリア原虫(P.knowlesi)が5種目として注目を集めています。
いずれのマラリア原虫もギムザ染色によって赤血球内にその存在を確認することができますが、サルマラリアは顕微鏡検査では
P. vivaxと区別が難しいことから、PCRによる検査が有用です。
そのほか、迅速診断キット(ICT Malaria P.f./P.v.?、OptiMAL?)やPCR-MPH法(岡山大・綿矢ら)があります。

マラリア原虫に関する問題は、国家試験や模擬試験でも頻出です。しっかり押さえておきましょう。

次、行きましょう!
【問題4】汎血球減少症の鑑別に有用な
検査として考えられるのはどれか。2つ選べ。(臨床検査医学総論)

(1)血清総蛋白
(2)γ-GT
(3)血清総ビリルビン
(4)ビタミンB12
(5)アルカリフォスファターゼ(ALP)

解答:3、4
解説:臨床検査医学総論からの出題です。汎血球減少は血液分野の疾患でよく聞かれます。
疾患と検査項目の関連性の問題は国家試験でもよく出題されます。
【解答へのアプローチ】
1.汎血球減少症とは・・・赤血球、白血球、血小板のすべてが減少した状態のことを指す症状であり、一般的に次の数値以下になると当てはまるとされている。
・ヘモグロビン:男 12.0g/dl未満、女 11.0g/dl未満
・白血球:4,000/μl未満
・血小板:10万/μl未満
2.汎血球減少症をきたす疾患
(1)骨髄機能の低下、造血幹細胞の障害が原因であるもの・・・再生不良性貧血、急性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、
(2)血球を破壊する機能が亢進したことが原因であるもの・・・肝硬変、脾臓機能の亢進、脾腫
(3)自己免疫性疾患・・・全身性エリテマトーデス(SLE)、サルコイドーシスなど
3.検査項目について
(1)血清総蛋白:主に全身の状態を把握するのに適する項目であり、血清中の総蛋白量の増減のみで汎血球減少症を鑑別できるものではない。
(2)γ-GT:膵臓や肝臓に多く存在し、臨床的意義が高いのは肝機能障害である。特にアルコール性肝障害では特異性が高い。しかしながら、本検査項目を評価しても汎血球減少症を鑑別するには足らない。
(3)血清総ビリルビン:一連のヘム・ビリルビン代謝系の異常を知るための検査である。血中のビリルビンは、赤血球の破壊亢進や肝細胞障害・傷害、および胆汁の排泄傷害により上昇する。
(4)ビタミンB12:ビタミンB12(コバラミン)は生体では核酸合成に関与する重要な補酵素である。このビタミンB12が欠乏することにより、細胞の核酸合成障害が起こる。この核酸合成の障害は赤血球だけでなく白血球や血小板にも及ぶことで、汎血球減少となる。
 また、体内のビタミンB12や葉酸が欠乏することによって細胞分裂が正常に行われなくなり、骨髄の中の赤芽球が大きくなる「巨赤芽球(きょせきがきゅう)」が産生される。通常よりも赤血球が大きくなると、骨髄での造血能力は上がる一方、赤血球になる前に壊れてしまう無効造血が起きる。これが、白血球や血小板にも及び、結果的に汎血球減少となる。
(5)アルカリフォスファターゼ(ALP):ALPは肝臓、骨、胎盤、小腸、腎臓に分布している。なかでも、臓器由来である肝臓、骨、小腸ではその臨床的意義が高い。検査では、血中に逸脱したALP量や胆管上皮細胞で合成されたALP量を推測することができるが、汎血球減少症を鑑別するためには、ALP1~ALP6のアイソザイムを分析及び好中球アルカリフォスファターゼ(AL-P染色スコア)が必要である。
 以上のことから、(3)血清総ビリルビン及び(4)ビタミンB12が鑑別に有用であると言える。

これを機会に検査項目が「何を知るための検査か?」を理解しておくことも必要です。

次がラスト問題です。

【問題5】グラム陽性菌の細胞壁に含まれる成分はどれか。2つ選べ。(微生物学)


(1)ペプチドグリカン
(2)リポタンパク
(3)タイコ酸
(4)β-ラクタマーゼ
(5)ペニシリン結合蛋白

解答:1、3
解説:微生物学から細菌の構造と機能に関する問題です。意外とこの分野の問題は見逃しがちです。低学年のうちから、確実に理解しましょう。高学年のみなさん、この問題は落とせません。
○(1)正しい。ペプチドグリカンはすべての細菌の細胞壁に存在する。N-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸との互いの連鎖からなる。
×(2)誤り。グラム陰性菌の中層に含まれている。
○(3)正しい。グラム陽性菌に含まれ、グラム陰性菌には存在しない。タイコ酸は抗原性をもち菌の型特異性を決定しうる。
×(4)(5)β-ラクタマーゼとペニシリン結合蛋白はグラム陰性菌に存在する。これを持つかどうかで、ペニシリン、セフェムなどの抗菌薬(細胞壁合成阻害薬)に対する感受性の有無に関わる。

 見逃しがちな基本的な部分を見直すことも重要です。しっかりと対策を立てておきましょう。

いかがでしたか?
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